2016年11月28日月曜日

*11月旅のご報告 茨城県常陸太田 宗像ファーム*

ヒヨリブロートは月齢20から新月までは、旅をしています。
旅先で出会った人、物、景色、空気、色、、、そんなものからパンを焼いています。
今回の旅はなかなかの長距離移動でした。
丹波→岡山県美作→岡山県備前→茨城県常陸太田→千葉県柏→茨城県守谷→丹波→篠山→丹波
我が愛車「あずき」をがんばらせすぎたので、今日から入院になってしまったほどです。
いい経験、いい出会いが満載の旅になりました。
イベントのご報告は別途ということで、今日は茨城県常陸太田の宗像ファームさんの話を。
長いので、ご興味がある方はどうぞ。
宗像ファームさんの小麦粉は、ヒヨリブロートの基本の味であるバゲットに使っています。
これが不思議なご縁で、
東京の蕎麦屋の友人が紹介してくれた方が、実家からほど近い蕎麦屋さんで、
その蕎麦屋さんが使っている蕎麦の農家さんが裏作で小麦を育てていて、
わけてもらったその小麦粉を島根県のベッカライヒダカで焼かせてもらったところ、
美味しすぎて、自分のバゲットはこれで行こうと決めてしまったのでした。
宗像ファームさんに伺うのは、今回で2回目。前回は大雪の後の1月だったと記憶しています。農作業を手伝うつもりが、雪でゆっくりさせてもらい、おかげでたくさんのお話をさせてもらったものです。
今回は小麦まきが目的。雨の後のすんだ青空に、色づく山々。小春日和の一日に穏やかでありながら、自然の厳しさをひしひしと感じます。ひと際目を引くのは、すっかり暖色になった木々の合間に、濃い緑と黄色の実りをつけるミカンや柚子。移ろう季節の流れと、日の光に何時間でも見入ってしまうほどの美しさです。
ここ常陸太田は、お世辞にも農業に適している場所とは言えません。山が深く、平地はほとんどありません。人々が長い年月をかけて、少しづつ開墾してきた大地は、畑もうねり、石っころも多く、大型の機械ではなかなか立ちゆきません。
北海道は十勝の小麦農家さんの農地と比べると、同じ作物を作っていてもこんなにも違うものかと思います。大量生産はできず、人力で行うしかない作業の数々。心から頭が下がります。(もちろん、大規模農業の大変さも重々承知した上で)

こんな傾斜の中を、地元のおばあちゃまは慣れた足取りで登っていきます。私はよろよろ。

長年農地として使っているところも次々に石が出てくるそうです。これを一つづつ拾っては集めの繰り返し。

小麦をまく機械の扱いを奥さんに教えていただいたのですが、傾斜のある畑ではまっすぐ押したのでは、谷に落ちて行ってしまうため、常に重心を傾け、軌道修正をしながらの作業です。足元も悪い中、力には自信のあるパン屋の私も、ほんの少しでへばってしまいます。
2016年は、平成の大飢饉だと、宗像ご夫妻はおっしゃいました。日照不足でとにかく収量が少なく、実は大きくならず、収穫したものもとても傷みやすい。一昔前だったら、本当に食べられない人が出ていただろうと。
ゆめかおり


これが一苦労。重心を傾けながらの作業です。
ヒヨリブロートは小さなパン屋。日々、もっと腕を上げたいと思っているのだけれど、それはこういう時に、豊作の時には豊作の時のやり方で、不作の時には、またそれもしかりで、あるものでパンを作り続けられるだけの力を身に着けたいと思っているから。
農業の現場で、日々自然と対峙しているお二人の姿に、どんな年も寄り添ってやっていきたいと、改めて感じるのでした。
宗像さんの育てる小麦は「ゆめかおり」。梅雨のある地域で育てると、麦が赤く色づく品種とのことで、ヒヨリブロートのバゲットは、真っ白ではなく内層が赤茶色がかっているのはそのためです。かっこよく言うとテロワール。
この小麦は、唯一この撒くタイミングで一度だけ肥料をあげるそうですが、後は、雑草と裏作の蕎麦を抜くだけで、小麦と大地の力を信じて育てていくのだそうです。と軽くおっしゃいますが、雑草と蕎麦を抜いていくって、どれだけのご苦労か。
結局この日は、小春日和の一日に、お米の脱穀、ゆずの収穫、キウイフルーツをもがせてもらって、ネギと白菜を取らせてもらい、みかんの丘に登り、小麦をまくという、傾き始めるとあっという間に落ちてしまう太陽との追いかけっこの充実した一日になりました。
美しい夕暮れ。こっからは時間との勝負。

気が付いたら、靴紐にもくっ付き虫がいっぱい。畑に入らないように、そっと取って歩きます。
次は小麦の収穫の時期か、もっと前に来られるか。自分のパンを、植物から知っていられる幸せを嚙みしめたいと思います。
余談ですが、この同じ畑の小麦を使っているパン屋さんが茨城県守谷市にあります。
ブレッド&ベーグル オーディナリー
https://www.facebook.com/Bread-Bagel-Ordinary-350730761766…/
今回の旅で、彼に出会えたのも、とても大きな喜びでした。本当に繊細で美しくおいしいパンを焼かれています。
ぜひ一度皆様もお立ち寄りください。
そして、近々、同じ畑の作り手違いでパンのイベントやりたいなぁ、一緒にパンを作ってみたいなぁと思っています。

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